経営者保証を外したい

当事務所では、米国MBA学位を保持する弁護士前畑壮志が、経営学的観点から徹底したアドバイスを行っています。

事業承継の障害としての経営者保証

会社の借入れを、経営者個人が連帯保証していることは、当たり前のように行われています。しかしこの経営者保証は、特に、事業承継の場面で問題となります。

「後継者が会社を引き継ぎたがらない」理由には様々なものがありますが、多く聞かれるのは、保証債務を背負いたくないというものです。

会社を引き継ごうと、引き継ぐまいと、相続放棄や限定承認をしない限り、経営者による連帯保証は相続人を拘束しますので、本来、会社を引き継ぐことと、連帯保証債務から逃れることは別の問題です。

しかし、会社を放っておいたら、会社の債務の連帯保証債務を相続人が負うことになります。相続人の誰かが会社を引き継ぎ、個人の連帯保証を外すことが重要になります。

このやっかいな経営者保証は、条件を満たせば外せる場合があります。このページでは、経営者保証についてごく簡単に説明します。

経営者保証を外して、承継の際の不安を取り除く

後継者が保証を引き継ぐことに難色を示し、承継そのものが止まる例があります。先ほど述べたとおり、会社の引き継ぎを拒んでも、相続人として連帯保証債務を負うことになりますので、法律的には少し違うのですが、感覚的にはよくわかる拒絶感です。

経営者保証ガイドラインとは

経営者保証ガイドラインは、中小企業と金融機関の間で経営者保証の扱いをどうするか、金融庁、中小企業庁のバックアップの下、全国銀行協会及び日本商工会議所が示したガイドラインです。法律ではありませんが、多くの金融機関はこれに沿うことが求められます。

このガイドラインは、次の二つの場面を扱います。

  • 経営者保証なしで借りる、あるいは既存の借入れについて経営者保証を外す場面
  • 返済が難しくなったときに、破産以外の道筋をつける場面

先ほども述べましたが、経営者保証ガイドラインは法律ではないため、要件を満たせば必ず外れるというものではありません。最終的には金融機関の同意が必要になります。

また、経営者保証ガイドラインによる経営者保証の解除を申し出た時点で、金融機関の態度が硬化することがありますので、申し出るかどうかは十分な注意が必要です。

経営者保証を外すために求められる三つの要件

ガイドラインは、おおむね次の三点を求めています。

1 法人と経営者の資産・経理が明確に分けられていること

会社の口座と個人の口座が混ざっていない。会社から経営者への貸付金が残っていない。役員報酬が適正な水準にある。事務所や自宅の賃貸借が、きちんと契約に基づいていて、適正な賃料が支払われている。ざっくりというと、経営者が会社を私物化していないことが求められます。

特に、役員貸付金の問題は解決が難しいことがあります。

2 財務基盤が十分に強固であること

会社の体力のみで借入れを返済できるだけの、強固な財務基盤があること。

3 金融機関に対して、適時に適切な情報が開示されていること

金融機関に対し、適時に、正直な状況や数字を報告する必要があります。

事業承継の場面に向けた特則と、新しい保証制度

事業承継時に焦点を当てた特則

経営者保証ガイドラインには、事業承継の場面に焦点を当てた特則があります(令和元年12月公表、令和2年4月から適用)。

特則は金融機関に対し、前の経営者と後継者の双方から二重に保証を求めることを、原則として行わないよう求めています。また、後継者に保証を当然に引き継がせるのではなく、その必要性を改めて検討すること、前の経営者の保証についても解除できるかどうかを検討することを求めています。

もっとも、特則も法律ではありませんので、保証が必ず外れるわけではありません。上に述べた三つの要件を満たしているかどうかが、ここでも判断の出発点になります。

保証料の上乗せで、経営者保証を付けない制度

信用保証協会の保証付き融資では、令和6年3月から、保証料の上乗せを条件に経営者保証を付けないことを選べる「事業者選択型経営者保証非提供制度」が始まっています。

利用するには、直近の決算で債務超過でないこと(または直近2期の減価償却前経常利益が赤字でないこと)、代表者への貸付金がなく役員報酬が妥当であること、法人と個人の資産が分離されていることなどの要件があります。ここでも、役員貸付金の整理が鍵になります。

交渉はどう進むか

  1. 現状の確認 どの借入れに、誰の保証が付いているかを一覧にします。
  2. 三要件との突き合わせ 不十分な部分を洗い出します。
  3. 不十分な部分の是正 役員貸付金の整理、経理の分離などを進めます。実務上、ここが難しく、時間がかかることが多いです。「承継の直前に相談する」のでは間に合わないとお考えください。
  4. 金融機関への申入れ 資料をそろえ、根拠を示して交渉に入ります。
  5. 金融機関による同意 要件を満たしていることが確認され、経営者保証ガイドラインに沿って経営者保証を外さざるを得ないと判断されれば、金融機関が経営者保証の解除に同意します。

(必ずしも全ての事案がこの流れになるとは限りません。)

弁護士に頼む場面はどこか

経営者保証ガイドラインに沿った、経営者保証の解除のためには複雑な法務を乗り越える必要があることがあります。経営者保証ガイドラインに沿って経営者保証を解除してもらうことを検討する、初期の段階から弁護士に関与させることが重要です。

  • 三要件のうち、法務の整理が必要な部分(役員貸付金の処理、賃貸借契約の整備、株式の整理)
  • 金融機関との交渉で、書面の文言を詰める場面(保証の範囲、上限、解除の条件)
  • 事業承継の全体設計の中で、保証をどう位置づけるか

当事務所は、認定経営革新等支援機関の認定も受けています。

前畑法律事務所では、経営と法務を切り離さずに検討できます。弁護士前畑壮志は米国の経営学修士(MBA)を取得しており、財務の観点から会社の体力向上を設計し、法務による実装を試みることができます。詳しくはMBA経営コンサルティングのページを御覧ください。

承継が終わった後も、金融機関との関係は続きます。承継後しばらく顧問契約を続けていただくと、新しい経営者が金融機関とのやり取りで迷ったときに、電話やメールで気軽に御相談いただけます。

よくある御質問

Q. 保証を外す交渉は、自社だけでもできますか。

できます。金融機関に申し入れ、資料を示して話し合う流れ自体は、御自身で進められます。ただし、経営者保証ガイドラインによる経営者保証の解除を申し出た時点で、金融機関の態度が硬化することがありますので、申し出るかどうかは十分な注意が必要です。

Q. どれくらいの期間がかかりますか。

役員貸付金の解消などが必要な場合、年単位を要することもあります。まずは現状の確認からお勧めします。

Q. 承継の直前ですが、間に合いますか。

間に合わないことがあります。ただし、保証を外すこと以外にも、承継の設計で採りうる手段はあります。残された時間で何ができるかを一緒に整理します。

Q. 和歌山県外の金融機関が相手でも対応できますか。

原則として、和歌山県内に支店がある金融機関との交渉を行っています。といいますのも、信用保証協会の動きについて、都道府県により非常にばらつきがあるからです。

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